VPSとは?高品質なAR体験を実現するVPSの仕組みと活用事例~ソニーのVPSを活用~
現実世界の映像にデジタル情報を拡張表示させるAR。
広告などに導入する企業も多く、より身近な技術となっています。
ARの技術を最大限引き出すのが、VPS(ビジュアル ポジショニング システム)です。
こちらでは、従来のARをさらに進化させるVPS技術について解説します。
VPS(ビジュアル ポジショニング システム)とはどのような技術?
VPS(ビジュアル ポジショニング システム)を一言で表すと、「画像情報を利用した位置特定システム」です。
現実世界のデジタルコピーである3Dマップと、スマートフォンなどに搭載されたカメラを通して見ている画像を照合し、向きや方位を含む高精度な位置情報を特定します。
位置情報を特定するシステムといえば、GPSを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
GPSは人工衛星からの電波をもとに位置情報を特定します。それゆえに、電波の届きにくい屋内や、建物の多い都市部では正確な位置情報を取得しづらいというデメリットがあります。
対してVPSは、GPSの電波が阻害される場所でも正確に位置情報を取得できます。
さらに、ユーザーが向いている方向や、周囲にある建物の位置まで数センチ単位で正確に特定することが可能です。
このように、正確でより詳細な位置情報を取得できるVPSは、GPSを補完するサービスとも言えるでしょう。
【VPSとGPSの比較表】
VPS | GPS | |
---|---|---|
位置の特定方法 | カメラの画像 |
人工衛星の電波 |
取得できる位置情報 | 方向も含めたより正確な3Dの位置情報 |
広範囲で2Dの位置情報 |
使用できる場所 | 屋内、屋外(建物の多い都市部) |
屋外(GPSの電波が阻害されない場所) |
主な用途 | AR・地図アプリ(ライブビュー)など |
カーナビ・地図アプリなど |
VPSの仕組み
VPSはカメラの画像により位置を特定するシステムと説明しましたが、もう少し詳しくVPSの仕組みを解説しましょう。
VPSではあらかじめ用意した3Dマップとカメラに映った画像をAIが解析し、正確な位置と方向を特定します。
3Dマップは複数の画像を元に作成され、AIが位置情報を特定するためのデータベースとなります。
AIはカメラに映った画像を模様として認識し、凸凹やシマシマなど特徴を捉えて3Dマップ(データベース)と照合します。もしくは、模様ではなく建物などの形状を認識する技術もあります。その結果、位置情報や向いている方向を割り出すことができるという仕組みです。
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通常の街の風景 -
VPS技術で空間を認識 -
認識した情報をもとにARを表示
ARコンテンツにVPSを活用するメリット
ARコンテンツにVPSを活用することで、次のようなメリットが得られます。
GPSよりも位置情報精度が高い

冒頭でも説明した通り、VPSはGPSに比べてより正確な位置情報を取得できます。
GPSでは位置情報に若干のずれが生じ、ユーザーが向いている方向も特定できないため、AR上のオブジェクトが正確な場所に表示されないなどの不具合が起こりやすい傾向があります。
従来のGPS技術とVPSを組み合わせ、精度の高い位置情報を取得することで現実世界とほぼ完全にリンクした、より質の高いAR体験が可能になります。
専用のマーカーが要らない
従来のARコンテンツでは、コンテンツを表示させる方法として「GPSによる位置情報」の他に「マーカー」を利用しているものもありました。カメラがマーカー(画像やイラストなど)を認識することで、コンテンツが表示される仕組みです。
マーカーは正確な位置にARコンテンツを表示させることに優れていますが、欠点もあります。
例えば、室内の限られたスペースや印刷物上にマーカーを設置するのは簡単ですが、街中などの広範囲にマーカーを設置するのは難しい場合が多いでしょう。
加えて、画角にも制限があります。広角でARコンテンツを表示させるには、遠くからでもカメラで認識できるほど大きなマーカーが必要なため、広範囲にわたるARコンテンツには不向きです。
VPSは建物などのランドマークが従来のマーカーの役割を果たすため、新たにマーカーを設置する必要がありません。そのため、広範囲にわたる場所でも広角な画像でも、ARコンテンツを楽しめるようになります。
細部まで作り込むことができる
VPSが採用されたARでは、緻密なARコンテンツを提供できます。
数センチ単位で正確に位置情報を取得できるため、例えばオブジェクトのうち建物や柱の陰に隠れているものは見えないように表示されるなど、まるで本物が実在するかのようなリアリティのあるコンテンツを実現します。
ARにおけるVPS技術の展望
ARコンテンツは正確で精密な位置情報を必要とするため、VPSはARの発展に必要不可欠な技術だと言えます。VPSの開発により、ARコンテンツはより誤差が少なく、より臨場感あふれる質の高いものに進化しています。
高精度のVPSが普及する事により、いつでもどこでも、現実世界に溶け込んだARのサービスが展開されていくようになると考えられます。
例えば、建物にカメラをかざすと店舗情報や口コミなどが表示されるサービスや、画面上に矢印を表示して道案内する先進的なナビゲーションなどが一般的になるかもしれません。
また、ARだけでなく、高精度なデジタルツインを使った現実世界をコピーしたMetaverse(メタバース)構築や、Metaverse空間と現実世界のリアルタイムな同期が行われるようになったり、高精度な3Dマップにより、ロボット・ドローンの自律移動に利用されていくと考えられます。
ソニーの高精度VPSを使用したSoVeC(ソベック)のAR

ソニーの研究開発部隊でVPSを開発しています。
大規模な3Dマップ情報を作成し、画像情報を元に地図内での自分の位置を推定することで、市街地や商業施設などの環境下でも正確な位置を推定できるようになります。
ARへの応用では、現実の空間をデジタル化する技術とVPSと組み合わせることで、あたかもバーチャルの世界に飛び込んだかのような、あるいはバーチャルの世界が現実と融合したかのような体験をユーザーに提供しています。
VPSにとって重要なのは、精度、処理量、どんな環境でも安定して動作すること(ロバスト性)です。事前に作成した3Dマップに対して、カメラ画像の対応付けをし、自己位置を推定しますが、作成した地図に対して画像を入力して自分の位置を推定する場合には、画像の対応付けが必要になります。
現実には、ブラーや暗所ノイズ、レンズ歪みといったカメラノイズのほか、日照変化、テクスチャレスといった環境側の課題など、画像からの自己位置推定や形状復元を難しくするさまざまな要因があります。特に課題となるのは、地図作成時と利用時での照明の変化です。デジタルの信号から昼夜の対応付けをすることが難しく、夜間には精度が落ちてしまうという問題がありました。
私たちソニーグループは、ディープラーニングを活用した学習ベースのアプローチを用いて、昼夜のように見えの違いが大きな場合にも安定した自己位置推定を実現しています。
さらに、画像から自己位置を推定するVPS技術を応用し、建設・製造・保守といったインフラ産業でで需要が高まっているデジタルツインを活用したDXに応用できる可能性があります。
具体的には、敷地内で働く作業員の位置情報をもとに、作業効率を高めることが将来的に実現できるかもしれません。
SoVeCではこのような先進的なVPS技術を活用し、ロケーションベースARアプリ「XR CHANNEL」を提供しています。

XR CHANNEL
ロケーションベースARアプリ「XR CHANNEL」
この「XR CHANNEL」はスマートフォンのカメラを通すことで、特定のロケーションにおいて現実世界と3Dオブジェクトの出現位置を数センチ単位で一致させることができます。これにより、拡張現実と日常空間が融合し、世界観に没入できるこれまでにない革新的なARコンテンツを創り出します。
建造物の多い都市部の空間はもちろんのこと、複雑な構造物もVPS技術で正確に把握するため、さまざまな環境下でご利用いただけます。実際に、多くのイベントで活用されています。
ソニーの高精度VPS技術の活かされたARイベント事例紹介
SoVeCではソニーの高精度VPS技術を採用した、質の高いAR体験を提供しています。
AR×LIVE
米津玄師 6th ALBUMリリース記念イベント「LOST CORNER AR LIVE in HARAKADO」
AR LIVE体験を提供する専用のiPadアプリを制作したクリエイティブスタジオWhateverと共創し、ここでしか体験できない特別コンテンツとして、巨大化したARの米津玄師さんが、原宿の街をステージとしてダイナミックなライブパフォーマンスを繰り広げるARライブ体験をデジタルツイン技術でサポートしました。
TOKYO NODE Explorer
虎ノ門ヒルズ TOKYO NODE Explorer
アプリケーション企画・開発を行うTOKYO NODE LAB(株式会社バスキュール・森ビル株式会社)と協力し、
「TOKYO NODE Xplorer」における虎ノ門ヒルズのデジタルツイン化とARコンテンツ制作をサポートしています。
VPS技術を採用し、正確な位置に高精度なARコンテンツを表示させることが可能となりました。
Beyond Station Expo UENO
超駅博 上野
JR東日本主催の「超駅博 上野」では、AR車両フォトスポットを設置。
すでに引退した115系電車とEF64形電気機関車の鉄道車両を、ARでJR上野駅のホームに出現させます。
VPS技術により、駅舎内でも正確にARを表示することが可能になりました。
Mobility as a Service
旅する北信濃~牛(スマホ)にひかれて善光寺御開帳~
長野駅および善光寺周辺の観光用ARコンテンツです。駅周辺では、公共交通機関や観光地への案内を表示します。 長野駅前広場では、大迫力の空駆ける牛のオブジェクトも登場。
VPS技術により、駅構内でも屋外でも正確な位置情報を高速で取得することができます。
AR×CHRISTMAS
GINZA MITSUKOSHI XR CHRISTMAS 2022
銀座三越の外壁にある「銀座シャンデリア」からさまざまなクリスマスのモチーフが飛び出すARコンテンツです。銀座三越やその周辺の空間へ正確にモチーフを表示させるため、VPS技術が採用されています。
XR CHANNELのVPS技術についてよくある質問
クリエイターの表現力を最大まで引き出すVPS
神は細部に宿る
人の心を動かすコンテンツは、細部への作り込みが欠かせません。
SoVeCのVPS技術を使うと、どれほど高精度な表現ができるのか?
12:45~ バスキュール / TOKYO NODE LAB の桟 義雄 様
25:20~ 株式会社D2C ID 前野 剛宏 様にクリエイター目線で語って頂いてます。
クオリティに限界までこだわりたい表現者の皆様、ぜひお声がけください。
最高峰のARライブ実現をサポート

アーティストの世界観を高い次元で具体化できます。
ARを利用して事業活動を行いたいなら
ARを活用することで、これまでにない体験をユーザーに提供できるようになります。事業活動で次のようなお悩みを抱えている方は、ARの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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イベント・フェア・ライブ
- リアルイベントとコンテンツ連動したオリジナルAR
- 場所や時間に囚われずいつでも手軽にARライブ体験
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店舗・施設
- カップルやファミリー層に向けたAR企画で店舗・施設への集客
- ARスタンプラリーで回遊率向上
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地域活性化・観光
- AR体験で謎を解く謎解きラリーで地域回遊
- 名所を彩るオリジナルのAR演出で地域案内や魅力を伝える
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キャラクター・エンタメ
- キャラクターIPの魅力を引き出すARコンテンツでファンエンゲージメント向上
- 話題性のあるAR演出でSNS拡散・コンテンツ拡散を促進
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広告宣伝・デジタルPR
- 商品やサービスの魅力を引き出すAR演出で認知度向上
- ARを使用したPR活動で話題性向上
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ブランディング・アート
- 高品質なARコンテンツ訴求でブランドイメージ向上
- アート作品のAR展示で表現力を拡張
地理や建物の形を活かした街に
溶け込む
ロケーションベースARで
新たなユーザー体験を提供します
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